研修担当者のブログ

2019.01.14

OJTとOFF-JT

介護現場における新人職員育成とスーパービジョン

☆目的(書く意味)
以下の2つが、この文章を書く目的です。読んで下さっている方が分かりにくかったらすみません(汗)
①論文執筆のための下書き(下書きなので加筆修正を前提としています)
②介護現場の人材育成に役立つ情報を発信したい

☆今回書きたいこと
「介護現場の新人指導担当者に求められる役割は何かを、スーパービジョンの枠組みから考える」です。これまで4年間介護現場において「コーチング」「SL理論」「PMリーダーシップ」「職場学習論」「経験学習論」等様々な理論を参考にしながら研修を行ってきました。
こうした今までの取り組みをスーパービジョンの枠を使って捉えなおし、あらためて介護現場の新人職員育成に求められるものは何なのか、ということを具体的に書いてみようと思います。

☆スーパービジョンの定義
この文章では、植田(2015)の定義を参考にしています。以下の通りです
「対人援助におけるスーパービジョンとは、当事者により質の高い援助を提供するために、人材育成と人材活用目的として明確な目標を掲げ、スーパーバイザーによって行われるスーパーバイジーの成長を支援する、また、その体制を整えるプロセスである(植田2009)」※1
つまり、対人援助の場において取り組まれる人材育成のプロセスにおいて使われる技法全てをまとめてスーパービジョンと称しています。

☆機能
スーパービジョンには、大きく3つの機能があります。
「教育的機能」「支持的機能」「管理的機能」です。三好(2009)は「介護現場では、特に『教育的機能』と『支持的機能』が不足している」と指摘しています※1。それぞれの機能については後ほど宮嶋(2012)の説明を引用します。

☆先行研究
スーパービジョンに関する先行研究の数を調べています。
介護職×スーパービジョン     (グーグルスカラーで246件、サイニイで9件)
ソーシャルワーク×スーパービジョン(グーグルスカラーで2350件、サイニイで140件)※2)
スーパービジョンは質の高い対人援助職を育成するために重要な概念であるが、
介護現場においては、その重要性の認識は高いとはいえず、介護職に関するスーパービジョンの先行研究も多くは見つかりません。
三好(2009)は、介護現場に足りないのは、特に「支持機能」「教育的機能」の2つだと述べています(それぞれの機能についてこのあと説明します)。
このあたりが自分の研究となります。
足りていないのが現実だと思いますが、実際の介護現場では様々なファインプレーが意識・無意識のうちに行われているはずです。それをだれかが見つけて言語化し、広めていくこと、ファインプレーを強化していくようなことができれば、実践の積み重ねから更に現場の人材育成を良くしていく事ができたら素晴らしと思いますし、だれかがそれをやるべきだと思います。なぜなら、現場を支える介護職員が色々な意味で変わってきており、人材育成が段々困難になってきているからです。これについては、いずれまた文章にしたいと思っています。

☆スーパービジョンの3つの機能①※3)
【支持的機能】
福祉・介護職の仕事は、様々な状況を抱えた人々と接して行う仕事ですので、援助者が自らの
立ち位置を明確に意識していても、利用者やその家族等と円滑な意思疎通が図れなかったり、職場での人間関係に摩擦が生じたりと、過度の負担やストレスに晒されることがあります。
支持的機能とは、スーパービジョン関係によって信頼関係を醸成した、バイザーがバイジーを
精神的に支え、ストレスなどの解消を働きかけ、バーンアウトを防ぐ機能です。この機能で最も重要なことは、バイジーが自己を理解し、自己の成長を自ら担えるようにサポートすることです。
【教育的機能】
教育的機能は、スーパービジョンの中核をなす機能です。具体的なケース・案件に対して、バイジーが職場における規則や福祉・介護の専門的な理論を根拠として、利用者やその家族等と接することができるよう、必要な知識や技術、態度・姿勢を教育します。
年齢に関係なく福祉・介護の職場で働く経験の浅い援助者は、とかく適応力や応用力がまだ乏
しく、個々の利用者やその家族等に対して適切な関わりがしづらいことがあります。そのような場合には、経験値を高めることによって、解決できる課題がいくつかあると考えられます。そうであるならば、スーパービジョンという場を生かして、シシュミレーションやロールプレイを行うことが有効でしょう。バイザーから受けるスーパービジョンの教育的関わりにより、知識・理論や技術を再確認し、実践の場での応用力が身につき、さまざまな利用者に対応できる力量が高まるのです
【管理的機能】
福祉・介護職場での仕事は、一人でできるものではなく、職場の上司や同僚と連携・協力して
はじめて利用者やその家族等に満足して頂ける援助となります。
チームケアとかチームアプローチという理論に基づく援助を組織力によって高め、クオリティの高い支援を行うためには、組織環境の整備が不可欠です。
スーパービジョンには、個々人だけではなく、グループを対象とした取り組みもあり、グループ・スーパービジョンにおいては組織が一丸となって、その組織の方針やルールを精緻していくことに役立ちます。
スーパービジョンおける管理的機能とは、バイジーが組織の中で活躍できるよう、また組織の
方針に沿って仕事に専念できるよう管理していくことです。

☆これらの定義を踏まえて、介護現場の新人教育に必要なスーパービジョンとは何か、を明らかにしていきたいと思います。少しだけ今の時点での自分の考えを書いて置きます。
【支持的機能について】
・指導者は、良い関わりをして新人の思いを理解することまでは出来ていると思います。
大きな課題は、指導者がこれをチームや上司に通訳すること、あるいはその反対にチームや上司の思いを新人に通訳して伝えることだと考えます。
【教育的機能】
・指導者は、新人を短い期間で独り立ちに近い状態まで育てることが出来ていると思います。しかし、気づきや主体性を身につけさせることが出来ていません。また、手順や日課をおしえるだけで仕事の面白さを伝えることが出来ていないと考えます。

この二つの課題は、人材の多様化が進む中で今後ますます深刻化していきます。
課題解決のヒントを介護現場の実践から探っていきたいと思います。

追記)ここまでで一度投稿したんですが、あらためて3つの機能の定義を読み返してみたら、特別養護老人ホームの介護職員にとっては、新人育成では支持機能が大事なの納得なんだけど、全体で考えたらやっぱり管理的機能こそが大事なんじゃないかと思えてきました。チームのメンバーの価値観が共有されていないことから様々な問題が起きているからそう思うのですが、これについてもまた改めて書きたいと思います。

※1)「特別養護老人ホームの介護職員が必要とするスーパービジョンについての研究」三好明夫2009
※2)2019.1.14調べ
※3)「医療法人純真会ほほえみデイケア 平成 24 年度 キャリアパス支援事業研修会テーマ:スーパービジョン」2012(http://web2.chubu-gu.ac.jp/blog/web_labo/miyajima/images/2012%2011%2021%20SV.pdf)2019年1月14日閲覧