研修担当者のブログ

2021.07.09

リーダーシップとマネジメント 人間関係とコミュニケーション

介護施設の事故はなぜ起こるのか

1.はじめに
こんにちは、ピーエムシーの斎藤洋です。
今回は、ピーエムシーの事故防止研修はどんなことやってるのか、の簡単な説明と(CM)、研修を何度かやってみて、本当のところ、介護現場の事故ってなんで起こるのか、最近感じたことを書きます。


ピーエムシーでも、時々介護施設向けの事故防止研修をやっています。
どんな感じでやっているかというと、
1)まず事前アンケートをお願いして、施設の事故の傾向などを聞きます。
2)結果を集計・分析し、課題をある程度把握したうえで研修内容を準備します。
3)アンケート結果の説明を含めて研修を実施します。

研修実施時は、最近は以下のような話をしています。

2.事故を防止するための具体的取り組み
参考資料「介護の事故防止活動の基本を考えよう(東京都国保連)」にそって、事故防止の評価基準と事故防止活動の取り組みの手順を説明しています。具体的には、

①「安全ルールを徹底する」
②「危険発見活動を行う」
③「ヒヤリハット活動を行う」

の3項目です。以下に私見も交えてこれらの項目を解説します。

①「安全ルールの徹底」チーム全体で、介護職員として最低限必要な知識や技術を学び、基本の欠如によって起こる事故を防ぐ活動です。ここが足りていない介護事業所が、案外多いのではないかと思います。
近年、介護現場には多様な背景の職員が入っていますが、多くの施設でOJTが十分行われていません。また、多くのベテラン職員は忙しくて「学びなおし」が出来ていません。チーム全体で定期的に「安全ルールの徹底」を学ぶ必要があるのではないでしょうか。

②「危険発見活動」は、KYT(危険予知トレーニング)など、自施設の危険な場所や事故の起こりやすい時間帯等を発見し、改善修正する活動です。本来、グループで話し合いながら自施設の課題を発見し、共有していくような活動が望ましいのですが、多くの介護事業所では、コロナ禍のためこれが出来ていません。事故防止委員会などが中心となって定期的に危険発見活動を行い、発見された危険要因を取り除き、経過をチームやご利用者家族等に発信するような活動が必要だと思います。

③「ヒヤリハット活動」は、ヒヤリハットに取り組み、結果の集計・分析を行うことで、自施設・自部署のヒヤリハットが「どのような場所で」「何時頃」「どんな状況で」起こっているのか、傾向を分析し、改善していく活動です。この活動は、ヒヤリハットの集計や分析ができる数名の職員がいれば、集めたデータから、自施設の潜在的なリスクを読み取ることは可能です。難しいのは全職員にわかりやすく周知し、意識してもらう部分ではないかと思います。

3.改めて、事故が起こるのはなぜ?
研修の中で、このようなことを話すと、多くの施設の職員さんから「やっている」「できている」と言われます。確かにそれら必要な取り組みがある程度出来ているのでしょう。
それでは事故を減らすために必要な取り組みって何なんだろう?そもそもなんで事故が起こるのか??
個人的には上記3点についても、色々出来てないことあるやろ!?と思っていますが、現場の介護職員さんたちの問題意識は、ちょっと違うのかもしれません。色々話を聞いていくと、「職員間の強い同調圧力の存在」が一部の介護職員を急がせてしまい、急がされてしまうことが原因で起こっている事故が、結構あるのかな?というところに気づきました。
無意識に「急いでる感」「ピリピリ感」が出てしまう人。そうした状況に過剰に反応し、「周りに合わせてしまう」人。その日の勤務、職員さんの組み合わせによって、事故が起こってしまうリスクが高くなるような気がします。
これは介護現場であれば、夜間よりも日勤帯、ユニット型施設よりも多床室で起こりやすいことが予想できます。そのあたりをヒヤリハットの分析指標に入れてみると何か分かるかもしれません。

もし、このような状況が頻繁に起こっているような事業所があれば、施設長や主任クラスの方は、職員さんたちの様子を見て、「がんばってくれてありがとう!」「大変だけど急ぎすぎないでね!」「忙しい中でも、ご利用者優先のケアを心がけてもらいたいんだ!」などのメッセージを強く発信してもらえたら嬉しいです。チーム全体への発信だけでなく、場合により個別のフォローも必要です。ここを両方やっていかないと、現場の職員さんたちには、「職員みんながしっかり休めるように、早く帰れるように仕事をがんばろう」というような暗黙の目標が形成され、そっちのほうが優先されてしまうように思います。
施設長の役割、とっても大事だなとあらためて考えています。

以上、いつのまにか私の勝手な妄想(?)になっていましたね。
介護現場の事故防止について、これからも学んでいきたいと思います。ここまで読んでいただきありがとうございました!

参考文献
「特集 介護リスクマネジメントと介護事故の防止介護の事故防止活動の基本を考えよう」(東京都国保連)
https://www.tokyo-kokuhoren.or.jp/nursing_office/statistical_material/white_paper/list_reiwa01/pdf/guid_special_risk_management.pdf