研修担当者のブログ
2021.07.31
家族心理学に職場の人間関係改善のヒントがあるかも
施設介護はチームワークが求められる職場であり、人間関係が上手くいかないことは職員にとって大きなストレスになります。新人育成においても、人間関係の悩みが良くきかれます。
昔、専門学校で介護教員として働いていたときの事ですが、ある20代の男子学生が特別養護老人ホームに実習に行きました。
50代の女性が実習指導者として関わってくれたのですが、この二人の関係がものすごく上手くいかず、学生は途中から実習に行けなくなり、最終的には実習先を変えてようやく決着した、という事がありました。
後で男子学生の話を良く聞いてみると、
・男子学生は50代の実習指導者に自分の(厳しかった)母親を重ねていたようだ。
・心の中では実習指導者=母親となっているので、助言や指導に素直に従えなくなっていた。
・しかしこれに自分では気づいていないので、なぜ上手くいかないか深く悩んでしまっていた。
このときは、実習指導者の女性に直接お会いすることが出来なかったのでわかりませんが、もしかしたら実習指導者のほうも、学生を自分の子どもと重ねて接してしまっていた可能性があるのかな、と思いました。
以前にもブログに書きましたが、近年、介護職の高齢化が進んでいます。
介護現場に専門卒・大卒・高卒の若い新人さんを受け入れるとき、このような擬似的な親子関係が起きやすい状況があると思います。
これがプラスの方向に働けば人間関係の良い職場になっていくだろうし、マイナスの方向に働くと人間関係を悪くしてしまう原因になってしまうので注意が必要です。
具体的には
「職員の○○さんのこと、お子さんと重ねて見てしまっているのかもしれませんよ?」
「あなたの母親(父親)くらいの年齢の職員さんだから、無意識に重ねちゃうのかもよ?」
などと問いかけ、考えてもらい、意識づけることが必要だと思います。
最も身近で小さな集団である「家族」との関わりの中で私たちが経験し、学習してきたことが、無意識に「職場」の人間関係の構築に影響している。このようなことが良く起こっているんだろうな、と最近考えるようになりました。
心理学には「家族心理学」というジャンルがあります。「家庭環境や家族構成、家族の中での役割が大きく影響されて個人の人格が形成される」という考え方です。
ある社会福祉法人の理事長さんは、家族心理学の知見を、利用者対応と職員の人材マネジメントの両方に活用されているそうです。
例えば、個別に認知症の利用者対応を検討する際に、その方の家族構成や担ってきた役割を考慮する。
例えば、新しく介護リーダーを任命する必要があるときは、候補者の家族構成を見て、なるべく長子を任命する、等々・・・
私も自分自身が中間子(次男)なのでよく分かるのですが、集団の中でリーダーシップを発揮したり、強い責任感で仕事に向き合えるのは確かに長子(長男・長女)かな・・・と思います。
中間子は自由な発想や行動力では勝負できる部分もあると思いますが、責任感をもって他人と行動していくことなどは、私のとても苦手とするところです。
もちろんそれぞれの強みと弱みがあるので、それが活かせる役割分担が出来れば素晴らしいですし、そのために心理学が役立つとしたらこれはすごいことだな、と思いました。