研修担当者のブログ
2022.12.06
介護現場における職員間のハラスメントの対応について
1.はじめに
新型コロナウイルスの影響で、どこの介護現場も大変な状況が続いています。そのような中で、感情のコントロールが難しくなると、つい職員間での言葉遣いが乱暴になってしまったり、声をかけられても聞こえないふりをしてしまうなどの状況が起こりやすくなります。
介護現場におけるハラスメントの対応は、今とても優先順位の高い課題です。今回は、職員間のハラスメントについて、管理者が何をすべきかということを考えます。
2.ハラスメントの定義
ハラスメントを直訳すると「嫌がらせ、いじめ」の事です。ハラスメントの種類はたくさんありますが、相手の尊厳を傷つける、不利益を与える、または相手を不快にさせる等の行為であることが共通点です。たとえ悪意がなかったとしても、された本人が嫌な行為はハラスメントとみなされます。さまざまなハラスメント行為のうち、①セクシュアルハラスメント、②パワーハラスメント、③モラルハラスメントの3つについては、厚生労働省によってその条件が定義づけられています。
3.上司や同僚からのハラスメント
新人介護職員の育成支援に関わっていると、「職場に怖い先輩がいる」「職場のケアの考え方に疑問を感じる」など、新人さんの色々な「生の声」を聞く機会があります。また、介護現場のリーダー職の方々との話では、「課題のある職員」についての悩みを良く聞きます。
具体的には「利用者対応が雑」「非協力的」「あいさつをしない」「同僚に高圧的な態度」など様々な職員の話が聞かれますが、多くの事例がベテラン職員についての課題で、対応について多くのリーダーが頭を悩ませています。
パーソル総合研究所が行った調査によると、20,2%の新人職員が「態度が高圧的なベテランスタッフ」のために1年未満で離職していたことが明らかになっています。
多くのベテラン職員が真摯に利用者に向き合い、チームワークで業務を行っている中で、ほんのわずかの「課題のあるベテラン職員」が存在することも事実です。
厚労省は職場で起こる様々なハラスメントを明確に定義し、その発生を防止するために2020年6月にパワハラ防止法(労働施策総合推進法)を施行し、企業に対策を義務付けています。
4.職場で起こるハラスメントの把握と対応
まず管理者がすべきことは、ハラスメントについての基本的な知識を学ぶ事です。厚生労働省が「あかるい職場応援団」というサイトで、とてもわかりやすく解説しています。ハラスメントに関する法律や自業種がハラスメント防止のために講ずべき処置等についても詳しく説明されています。本当に当たり前のことなんですが、ハラスメントの定義を現場で起こっている事にあてはめて「どこまでがハラスメントか」を判断するためには、基本的知識をある程度深く理解できていないと難しいと思います。
次にすべきことは、介護現場の状況を知ることです。定期的なアンケートや、介護現場のラウンド、職員との1on1ミーティングを行い、職員間のコミュニケーションの気がかりを探します。多くの介護現場では、何かしら課題が出てくると思います。
出てきた課題について、管理者は他の役職者と相談し、必要があれば当事者(双方)と面談を行います。お互いの意見を客観的に聞き、必要な対応を行います。
ここまでは出来ている管理者の方が多いと思いますが、問題はこのような対応をしても事態が改善しない場合です。よっぽど大事にならない限りは、解決されずにここでとどまってしまっているケースが多いと感じています。管理者が課題を抱え込んでしまっている状態です。どこまで指導するか、どこまで厳しく伝えるのか、非常に悩ましいところですが、カッとなるとつい高圧的な言い方をしてしまう職員さんに対して「気持ちは受け止めるが、(高圧的な言い方をしてしまう)行動は受け止めない」という原則を守り、時には厳しく指導する、課題を抱え込まず相談できる先を探す、といった行動をぜひとっていただきたいと思います。