研修担当者のブログ
2023.02.07
スピーチロック対策にどう取り組むか
1.はじめに
今回は、入所施設のスピーチロックを防ぐ取り組みについて検討します。
スピーチロックは一般的には「言葉による身体的、または精神的な行動の抑制」とされています。
介護現場で働いている方々にすれば、スピーチロックの定義・現状・弊害等については既によくご存じかと思いますので、今回は具体的な対応策について考えていきたいと思います。
2.言い換え
スピーチロックや高齢者虐待についてインターネットで調べてみると、スピーチロックにならない上手な言い換えや対応の工夫がいろいろと出てきます。YOUTUBEで膨大な動画(どれも参考になる!)をアップされている「いけちゃんの介護大学」を観てみると、スピーチロックの言い換えの例が示されていました。
他にも色々調べてみると、以下のようなポイントがあるようです。
①ゆっくりと話す。②具体的に伝える(待っていただく時間や職員の予定など理由を説明する)
③依頼形で伝える(~していただけませんか?)
また、言い換え以外にも普段コミュニケーションを取る中で「ご利用者との距離感を意識する」ということも大事だと書かれているものがありました。入所施設では職員とご利用者の距離感が近くなりやすく、それがハラスメントの原因になっているという指摘もあります。言葉遣いを意識し、お互いの距離感を保つことは確かに大事なことだと思いました。
3.忙しい時間帯の業務を見直す
また「スピーチロックの言い換え」などの直接的な対応策だけとらわれず、もう少し広い目でこの問題を捉えなおす事も大事だと思います。
スピーチロックが起こる時は、職員が忙しい時が多いと思います。食事前後や口腔ケア、排泄介助の時間など、複数の利用者への対応などが重なってしまう場面などです。スピーチロックが起こってしまうのはどんな場面なのか、何時頃なのか。その特徴を明らかにしていくと、業務が重なる忙しい時間帯の業務を見直すという対応方法にもつながります。起こっている出来事の要因を多面的に捉え、対応策を検討していくことも大事だと思います。
4.論文等を読んでみる
スピーチロックで検索してヒットする論文は多くはありませんが、清水径子さんという方が、スピーチロックをカテゴリー化する試みを行っています。
スピーチロックを図のようにカテゴリー分けしてみると、リスク回避など、なくすことが難しいものと、職員の混乱や焦り等によって起こる、なくしていくべきカテゴリーのものに分けられます。
このように、スピーチロックの解像度を上げていくことも、スピーチロックを減らす取り組みに繋げられると思いました。
最後に、スピーチロックに関するアンケートを多く行っていますが、いつも気になるのが「他人事のような捉え方をしている」方が結構多いことです。その多くが中堅以上の職員だと思います。中堅職員への成長支援、コロナ禍でなかなか出来ていないと思いますが、人材不足の介護業界において、豊富な経験を持つ中堅職員の役割はこれまで以上に重要になっていると思いました。
参考文献
『言葉による抑制(スピーチロック)に関する介護老人福祉施設職員の認識と実態』清水径子ら、
日本認知症ケア学会誌、http://ci.nii.ac.jp/naid/40020998643
『介護職が使ってはいけない不適切な言葉とは?』いけちゃんの介護大学(YOUTUBEより)、https://www.youtube.com/watch?v=sLirgyMWLIs