研修担当者のブログ

2020.05.01

人材育成プログラムや研修カリキュラムの考え方

ピーエムシーの「3つの研修」の考え方

  この2か月、 新型ウイルスの影響で事務所で過ごすことが多く、今後の研修の方向性を色々と考えていました。時に社内で、時に遠方の講師の皆さんにオンラインで参加してもらい、色々と意見交換を重ねてきました。

 現状にあわせてこれまでの研修のありかたを変えていくことは大事なことです。同時に、研修の本来の目的がぶれてしまわないよう、注意が必要だと思っています。以下に、弊社の介護事業所における研修の考え方をあらためてまとめます。

1.課題をふまえた研修計画を策定する

 弊社では、施設訪問型研修を年間でのべ200回ほど実施していますが、人材の多様化に伴って「個々のスタッフの思いや能力、モチベーションのギャップが大きく、組織がまとまらない」「管理者やリーダーのマネジメントがうまくいかないために、スタッフ間の不平不満が解消されない」「『多様な新人』を理解し受け入れてチームで関わろうという気持ちをもてないスタッフの存在や、協力することの難しい組織の風土」等の課題が目立って聞かれるようになっています。

 介護スタッフが多様化することで、階層別研修で管理者・リーダークラスだけを育成しても効果が上がらない状況になっています。このような組織の課題に対して、弊社では以下のように研修形態を提案し、実践しています。

2.全員参加型研修を行い、スタッフの共通認識を高める

【図2】の①の部分は「全員参加型研修」の対象者です。この研修の目的は、仕事に対する思いや働きやすさなどについてみんなで考えることで、チームワークやコミュニケーションの大切さに気付いてもらうことです。介護職員以外の相談職や介助員なども含めてなるべく全職種・全スタッフに出席をお願いして研修を実施します。

 研修目的に達成のためには、ワークショップ形式で実施することが理想です。研修実施に先立って、事前に「働きやすさと不適切ケア」についてのアンケートを実施します。この結果を全員で話し合い、自事業所の課題を共有した上で、行動目標をひとつだけ策定します。行動目標を年度末まで実施して全員でふりかえり、評価を行います。

3.リーダー研修はマネジメントを学ぶ

【図2】②の部分はリーダーや管理者のための「階層別研修」です。これは事業所のリーダーに実践を通してマネジメント能力を学んでもらうことを目的に行っています。具体的内容として

・一般職員に対する指導のあり方や関わり方を検討する

・業務に関する課題を発見し、改善を検討する

の2点について自事業所の課題を中長期的な視点で捉え、改善策を検討し実行します。どちらかというと研修というよりは、職場の課題解決のためのプロジェクトです。介護職員は、日常業務を通して専門的知識や技術以外のことを学ぶ機会はほとんどありません。

 そこでこの階層別研修を通して企画書・報告書の作成方法や会議における起案の方法、新しい取り組みをいかに組織に浸透させるかなど様々な取り組みを経験します。ここで重要なのは、「マネジメント」のとらえ方です。中原は、人材の多様化が進む現代社会において、マネジメントのとらえ方を「管理」から「支援」へと変化させていくことの重要性を主張していますv。ここをリーダークラスの職員がどう解釈し、どのように実践していくかがリーダー研修の肝だと思います。

4.新人育成を通して、指導担当者や受け入れチームの成長を目指す

【図2】の③部分は「多様な新人スタッフを育成するための研修(OJT)」です。新人育成については指導担当者を専任し、知識技術の指導だけでなく、メンタル面のフォローも行う「プリセプター制」を取っている施設が多いようです。しかし、実際に介護現場での新人指導が始まると、人出不足も手伝って中々丁寧な育成が出来ない現状があります。新人が独り立ちするまでの期間は、新人職員はもちろんですが、指導担当者にとっても大きな負担であり、これが中堅職員の離職の一要因となっているという研究もありますvi

 当たり前の話ですが、「自分が出来る」ことと、「人に教える」ことは、大きな違いがあります。新人職員を受け入れ独り立ちに至るまでの間の指導者支援の体制を検討してください。具体的には、①なるべく早めに指導担当者を任命、②指導担当者に対する事前研修を実施、③チームのメンバーにも協力を要請、④指導担当者へのフォローアップ、⑤終了後のふりかえり、を行い「新人指導は大変だったが、自分の成長にもつながったな」と指導者に前向きに振り返ってもらえるような仕組みづくりが必要です。

https://www.mhlw.go.jp/topics/2009/10/dl/tp1023-1g.pdf、2009