研修担当者のブログ
2023.08.08
介護職の対人コミュニケーションスキルを向上させる方法
10年以上介護現場の新人育成・指導者育成をやってきましたが、介護は本当に教えることが難しく奥が深い仕事だと思います。指導者は毎日、新人にどのようにご利用者対応を教えるのが良いのか悩みながら指導を行っています。
例えば、
・ご利用者が「家に帰りたい」と何度も繰り返し訴えているときどうすれば良いか?
・トイレ誘導の声をかけたとき、ご利用者から拒否されたらどうすれば良いか?
・ご利用者の介助をしようとして痛がられたり、怒られたりしたら、どうすれば良いか?
新人職員がご利用者からこのような反応をされたとき、指導者としてどうアドバイスすればよいか。なぜ、うまく行かなかったのか。どうすれば良かったのか。どのように新人に学んでもらうか。指導者は本当に色々なことで悩みます。
このようなとき、プロセスレコードを書いてみると、まず指導者自身が「あのときはどういう状況だったのか」「ご利用者の思いはどのようなものだったのか」「新人にどのようなアドバイスをすることが適切だったのか」を冷静に振り返ることができます。
プロセスレコードとは、ご利用者と介護職の間に起こる会話やそれぞれの反応・行動を記録して、その記録を分析・考察する手法で、対人コミュニケーションのスキルを向上させるために大変役立つツールです。プロセスレコードを使うことで、自分自身で振り返るだけでなく、その場の状況が分からない第三者に具体的なイメージを伝え、適切なフィードバックをもらうことができます。
先日の指導者研修でも、この手法を用いて指導場面のふりかえりを行いました。
複数名の指導者が参加していたので、お互いのプロセスレコードを読み、意見交換を重ねて様々な気づきや教訓を得ることができたと思います。
例えば、
・新人に対して「〇〇がまだ出来ていないね」という課題だけでなく、「〇〇できるようになったね」というプラスのフィードバックをたくさん与えた方が新人のモチベーションがあがる。
・「何か分からないことある?」ではなく「早番の業務で分からないことある?」など、新人職員への質問はなるべく具体的なもののほうが答えやすい。
・覚えることが苦手な新人職員には、なるべくスモールステップで少しずつ順番に教える
・新人は、自分が声をかけたあとのご利用者の反応を以外と見ていないので、そこを意識するようアドバイスをする。
・OJTで全てを教えることはできないので、OFF-JTなど他の方法も併用していく事が必要。
このようにプロセスレコードを書くことで、実際の指導経験を深く内省し、生きた教訓を得ることができます。生きた教訓は色々な場面で繰り返し活用できるので、指導者はこれを活用し、よりよい新人指導ができるようになっていきます。
今後も頑張っている指導者によりよいフォローができるよう、講師も学び続けていきたいと思っています。