研修担当者のブログ
2024.01.15
部下指導が上手くいかないのは相手のせい?それとも自分のせい?
[認知の歪みとは]
皆さんは「認知の歪み」という言葉を聞いたことがありますか?この言葉は心理学の分野で使われ、個々の物事の見方や解釈が人によって大きく偏っている状態を指します。
今回はこの「認知の歪み」と、それが職場の人間関係にどのような問題を生じさせるのか、そして「認知の歪み」に対する対策のひとつである「認知行動療法」について説明します。
まず、「認知の歪み」とは、私たちが自分自身、他の人、そして世界について持つ誤った、または偏った信念のことを指します。極端なネガティブ思考やポジティブ思考など、自己中心的な思考パターンがこれにあたります。
[認知の歪みの原因]
認知の歪みは、多くの要素から生じますが、以下の3つが主な要因とされています
1)過去の体験: これは最も一般的な要因の1つで、私たちの過去の経験が現在の理解や認知に影響を与えます。例えば、過去にネガティブな経験をしたことにより、同様の状況が起こったときに否定的な結果を期待してしまう傾向があります。
2)脳のキャパシティ: 私たちの脳は一度に多くの情報を処理することができません。そのため、情報過多の状況では、私たちの脳は重要な情報だけを選択的に捉えようとします。しかし、これが認知の歪みを引き起こすことがあります。ある特定の情報に偏って注意を向け、他の情報を無視するため、全体的な意味が失われることがあります。
3)確認バイアス: 私たちは未来の出来事や知らない人に出会ったとき、自分の既存の信念や見解を確認する情報を探し、それに基づいて意見や行動を形成しやすい傾向にあります。このバイアスは、新たな視点や情報を受け入れることを難しくしてしまいます。
これらの「認知の歪み」が発生する要因を理解することで、対応策を検討しやすくなります。
[周囲への影響]
「認知の歪み」はチームでの作業にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
1)まず、コミュニケーションの問題があります。認知の歪みがあるメンバーは、他のメンバーから発せられる情報や意見を歪んだ視点で解釈してしまう可能性があり、これが言葉の背後の意図や意味を誤解する原因ともなり得ます(相手には悪気がないのに悪意を持たれたと解釈してしまう)。
2)次に、個々の判断力への影響です。誤った認知を持つメンバーは、情報の解釈や判断において偏りが生じ、これはチーム全体の意思決定や業績に影響を及ぼす可能性があります。
[対策]
では、どう対策を取ればよいのでしょうか。
ここで「認知行動療法」が役立ちます。認知行動療法では、自分の認知の偏りを認識し、それを修正することで問題を解決しようとする手法です。 具体的には以下の3つのステップを試すことができます。
1)自己観察:まず、自身の思考パターンや傾向を理解するために、自分自身の思考や感情を観察し、記録します。
2)認知の再評価:自分の歪んだ認知を見つけ出し、それが事実に基づいているかどうかを再評価します。具体的な証拠や論理的な推論を用いて、自分の考え方が合理的かどうかを問いかけます。
3)新しい視点の探求:現実をより正確に表現する、新しい視点や解釈を探求します。その後、これら新しい視点を採用し、自分の生活に適用します。
認知の歪みは誰もが持っているものです。しかし、歪みの種類(10種類あります)や強さは、個人差
が大きいです。そして認知の歪みがストレス状態やうつ状態を引き起こしてしまうこともあります。
良いとか悪いではなく、誰もが「自分にも認知のゆがみがある」ということを自覚し、歪みを少しずつニュートラルな方向にもっていくことで、自分自身も周りの人も楽になっていけると思います。
今年度のリーダー育成研修では、この「認知の歪み」を学び、自己診断を行い、自己理解・他者理解に活かす取り組みをはじめました。対人関係のトラブルについて考察していくと、認知の歪みが原因で起こる問題は本当にたくさんあるなあと改めて気づかされます。
もっともっと「認知の歪み」について学んでいきたいと思っています。